売買秘帖6
六 発達
知者不言 言者不知
今まで書いてきたことは、株式売買におけるほんの基本的な部分である。
正直この先は書こうかどうか迷った。
最近は、老子の言葉にもあるように「知者不言 言者不知」という言葉が身にしみてわかるようになって来たからだ。
知る者は言わず、言う物は知らないというように、知っている人は黙っている物だ。
知らない人程、ベラベラと喋るものである。
書こうかどうか迷ったのは、巷で流れている噂で、本当に儲かる方法があるのなら本にして世間に広めたりするだろうか?
ということに、少し共感してしまったからである。
広まってしまえば、それは大衆の物となり、奥義ではなくなってしまう。
本当に儲かる方法というのは、あったとしても隠されているものではないだろうか。
また、相場の達人でもない私がこのように文章を書き、人目に触れるような場所で発表するのも
かえって逆効果になってしまうかもしれない。
どうせなら、自分だけの覚書として残しておいたほうがいいのかもしれない。
しかし、よく考えてみると現在の私の知識は、出版されている著書を読めば手に入る。
いわば、世に知れた知識の一部でしかない。
その知識を元に、自分独自の方法を考えていくのが成功への道だと感じるのである。
世に知れた知識の一部なら、この文章で書くことになんの問題もないのではないかと思ったのである。
相場で成功した先駆者達は、儲かる方法を著書にして世に広めてきた。
何故そのようなことをしたのだろう?
もしかしたら、その方法は既に使えない方法であるのかもしれない。
だが、その方法の考え方は参考になるだろう。
視点を変えて見てみることにする。
中国武術というものがある。
中国武術は完全に師匠(老師)と弟子のシステムで成り立っている。
このシステムが何千年と続いてきているのだ。
弟子が新たな流派を築き、色々な流派が出来てきた。
弟子を何人もとる老師もいる。
だが、その中でもほんの一部の弟子にしか奥義は教えないのである。
全ての弟子にも、その流派の大部分を教える。
その大部分をマスターすれば、その流派をマスターしたといえるかもしれない。
だが、本当にマスターしたというのは、その秘伝の奥義を教えてもらわなければ出来ないのである。
これと相場にも同じようなことがいえるのではないだろうか?
秘伝の奥義は、どこかに存在するのかもしれない。
だが、一般には明かされていない。
ましてや書物にして出版しているとは思えないのである。
書物からは大部分をマスターすることはできるかもしれない。
秘伝の奥義を知りたいと思わなければ・・・
だから、もし今後書籍からではなく、自分で考えた方法が出てきたなら、ここで文章にして書くことはないだろう。
ここに書かれていることは書籍を読めば分かるであろう方法だ。
何冊も書籍を読むには時間と労力のいることだ。
その短縮ができるかもしれないというだけだ。
この文章で何か感じ取れるものがあるのなら、参考にしていって欲しい。
そして、自分独自の方法を考えていって欲しい。
初心者では考えないであろう6つの項目
株式売買では、次に上げる6つの項目が成功への鍵とされている。
初心者のうちでは、この6つの項目を考えることはないだろう。
せいぜい1つ、よく考えて2〜3つといったところだろうか。
【6つの重要項目】
1.勝率
2.1株単位で売買したときの利益と損失の相対的な大きさ
3.売買コスト
4.売買の頻度
5.売買資金の大きさ
6.ポジションサイジングのモデル
この6つの項目が最終的な利益を左右することは間違いないだろう。
必ず考えなくては、いけない。
次から各項目についてもう少し詳しく説明していく。
勝率
勝率とは、利益が出た売買と損失が出た売買の割合である。
実際に、ある程度売買してからでないと求めることはできない。
10回売買して8回利益が出て、2回損失が出たら、
この10回の売買の勝率は80%である。
勝率が悪いようなら、売買方法が良くないのかもしれない。
だが、必ずしも勝率のみで最終的な利益は生まれる物ではない。
1株単位で売買したときの利益と損失の相対的な大きさ
10回売買したときに、8回利益が出たとする。
この8回の平均利益が2万円だったとする。
残りの2回は損失が出た。
この2回の平均損失は10万円だった場合。
利益の合計は
8×2=16万円
損失の合計は
2×10=20万円
となる。
80%の勝率でも、合計はマイナスになるかもしれないのである。
これを期待値で考えると比較しやすい。
期待値は1株単位で考えるのである。
先ほどの例は1000株単位で売買していたものとする。
8回の利益の平均利益は2万円となる場合。
1株当たりの平均利益は、20円である。
2回の損失の平均損失は10万円となる場合。
1株当たりの平均損失は、100円である。
期待値は、以下の式によって求めることができる。
先ほどの例をこれに当てはめてみる。
期待値は−4だ。
1円につき4円の損失を出していることになる。
では、次の売買の期待値を求めてみよう。
30回売買した場合に7回は利益が出た。
平均利益は、7万円である。
23回は損失が出た。
平均損失は2万円である。
このときの期待値は?
1株当たりの平均利益は、70円。
勝率は23.3%である。
1株当たりの平均損失は、20円。
負率は76.6%である。
期待値は0.99である。
1円につき99銭の利益を出しているのだ。
先ほどの例と比べても後の例のほうが、儲かるのである。
最終的に利益を出すなら期待値がプラスでなければならない。
期待値がマイナスになってしまう場合は、どうしてマイナスになるか見直さなければいけない。
売買コスト
売買コストは、手数料などである。
取引手数料が往復1000円する場合に、1万円の株を購入する場合は、10%も手数料で取られてしまう。
10万円の株の場合は、1%で済むが。
また、短期売買になればなるほど、この手数料が関係してくる。
1度買って、ずっと売らなければ500円で済むが、10回も売買すると1万円も手数料でとられてしまうのだ。
売買の頻度
利益率が同じ場合、売買の頻度が多いほど当然利益も大きくなる。
一度の売買で1万円の利益を得る場合、1年間で一度しか売買しなければ
年間利益1万円である。
毎日売買すれば、年間利益365万円の利益になる。
これは、大きな違いになる。
売買資金の大きさ
売買資金の大きさは、売買に大きく関係してくる。
1万円の損失でも、100万円の資金なら、1%の損失に過ぎないが、
10万円の資金なら10%の損失になる。
その逆で、100万円の資金で1%の利益が出た場合1万円の利益だ。
10万円の資金の1%は1千円である。
利益を複利で増やしていくならば、最初の資金の大きさにより、目標までの期間も大幅に変わってくるのである。
ポジションサイジングのモデル
ポジションサイジングとは、現在の資金では何枚売買するとちょうどいいかということである。
これは、資金の増え方に大きく関係してくる。
よく使われているのが、資金の何%は使わないで余裕資金として残しておくというやりかただ。
実際のところポジションサイジングを理解していなく、適当に50%を余裕資金として
決めている人が多いのが現状である。
資産の増え方は、ポジションサイジングと密接に関係しているといっても過言ではない。